新年度・新学期ですね。
ぴかぴかの制服の、すこし緊張した
面持ちの学生さんとすれ違うと、
なんだかどきどきします。
今日から新しい学校、はじめての電車通学、
降りる駅はあといくつ?
ふ、おなかの下、緊張のせいかな、
おトイレ行きたい。
降りる駅まであといくつ?
大丈夫だよね?
ね?
ふと、おむつ列車、という言葉を思い出す。
どこで聞いたのかしら。
*
『おむつ列車
ーT線の取り組みー』
社会学部社会学科1年A組
<個人情報のため名前は伏せさせていただきます>
T線、の名は鉄道ファンでなくとも
広く知られているであろう。
S県から隣接するK県を横断し、
首都圏へと続く路線である。
(略)
このT線には、あまり知られていない
「日本一」の記録がある。
それは、「車内における失禁数」だ。
(*別紙資料2参照)
理由として、通勤快速列車の場合、40分以上
停車しない区間があること、ラッシュ時には200%と言う
乗車率のため、車内にトイレがあるにもかかわらず
利用ができないこと、
(*別紙資料3参照)
と言う点が考えられるであろう。
(略)
ある時期まで、『ターミナル駅で、乗客が降りたあと
車内に残されたいくつもの水たまりを、清掃員が
手際よく片付ける光景は、ごく当たり前』のものであったという。
(*『』内引用別紙資料6参照)
だが、ある時期、さらに言えば、ある出来事を境に状況が一変する。
(略)
車中の不審な液体=有毒物質、という可能性が想定されなければ
ならなくなったのだ。
車中で不審な液体が発見されれば、その時点で列車は停車し、
全乗客の下車、避難誘導が行われ、
ターミナル駅をはじめとした主要駅に待機した特殊装備の専門部隊が
細心の注意のもと液体を除去する。
人命を守り、安全を確保するためとはいえ、
一連の作業により列車の利便性、乗客の満足度は著しく低下し、
またかけられたコストは莫大であることが見て取れる。
(*別紙資料9・10参照)
(略)
このため導入されたのが「おむつ専用車両」である。
また、車両の導入に併せ、会社をあげた「おむつ着用推奨」の
PRが行われた。
おむつを着用しながら、気兼ねなく電車を利用して欲しい、
というのが、その意図するところである。
「おむつ専用車両」には快適な利用のため、さまざまな
工夫が凝らされており、そのうちのひとつが、
車内に設けられた「おむつ交換スペース」である。
トイレまわりの座席を廃し、かわりにパーティションで仕切られた
個室空間を設置。これにより、おむつを「使用」した際、
車中で交換することが可能となったのである。
また、不測の事態に備え、同スペースには
おむつの自動販売機も備え付けられている。
(略)
以上の取り組みにより、「車中の不審な液体」は
大幅に減少し、結果、費用の削減に直結したことが見てとれる。
(別紙資料14参照)
おむつ専用車両は大変に好評であり、導入時は
一列車につき1両であった車両は、次々と増やされ、
同年度中には、列車の半数以上が「おむつ専用車両」という、
通称「おむつ列車」が運行されるまでに至ったのである。
(別紙資料15参照)
(略)
最後に、レポート作成にあたり、わたし自身で
おむつ専用車両の利用を行った。その様子を以下に記載する。
乗車前に、1.5リットルほどの水分を摂取し、
おむつ専用車両ではない車両に乗車する。
これは、「車中で急な尿意を催し、やむを得ず
おむつ専用車両を利用する」、という状況を再現することで、
車両の利便性を確認したい、という意図からである。
混雑が最も激しいとされる時間帯に、Y駅より乗車、
すでに若干の尿意を覚えていたが、
<以下、ページなし。遺失したものと思われる>
*
もちろんフィクションです(笑)。
社会学部のレポートシリーズ、面白いな。
*
拍手をいただいています。
ありがとうございます。
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