おもう、春。

桜が咲き始めました。
春です。
春になるとわくわくします。
似ている、思春期のわくわく。
思春期を遠く過ぎてなお、思春期について
思うことはわくわくします。
あちらこちらで花が咲いて、虫が湧いて、
風が吹いて、ぬるい水、それらの残酷な、
まじわり。
思春期を描くことは、春を描くこと。
永遠の春でなく、残酷であった、春。

　からだのなかで、めざめた春は、
　あいされたい、
　血管の水路をとおって、くるくるめぐる、
　あいされたい、
　夜のあいだ、だれにも見られず、
　あいされたい、が、
　きりきり育って、いっぱいになって、
　口からあふれだすかわりに、
　春の昼下がり、
　日なたの、ぬるい水に、
　流れていった。